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働き方は自分で作ってきた NOMURA SHOTEN 野村空人

働き方そのものを作ってきた野村空人さんにとって、仕事は生活の一部であり自分の一部となっている。

  • PhotographMomoka Omote
  • TextHERENESS

HERENESSではこれまで心地よい着心地を生み出す技術や生産におけるサステナビリティの知見をスポーツウェア開発で培ってきた。今回それをより広い分野にも応用するべく、日常着にも製品カテゴリーを拡張した。
そうすることで、アパレルにおけるサステナブルな生産や責任あるものづくりをより多くの方に知ってもらい、その価値が普遍的なものになる礎になると考えただからだ。

そして、その第一弾である〈UNDERCURRENT JACKET〉〈UNDERCURRENT PANTS〉は、コロナ後のワークスタイルを考慮した現代のワークウェアを想定して作ったものだ。フォーマルとカジュアル、内と外を行き来する柔軟な働き方を想定している。ちなみに名前の由来はビル・エバンスとジム・フォールによるJAZZの名盤『UNDERCURRENT』から拝借した。働く時間が日常生活の底流に流れる大事なものだと考えたからだ。そして、その時間はこのアルバムの紡ぐ音のように心地よいものであって欲しい。

そんな現代的な働き方を実践する人物として今回登場していただいたのが、HERENESSの新しい拠点、元浅草のご近所に時を同じくしてオープンした立ち飲みリカーショップ〈NOMURA SHOTEN〉のオーナー野村空人(のむら そらん)さんだ。

バーが変化する場に立ち会ってきた

バーテンダーの確かな技術を背景にブランドアンバサダーや店舗プロデュース、ディレクションを務め、今回自身のスペースとして〈NOMURA SHOTEN〉を立ち上げた空人さん。まずは彼が、今に至るキャリアパスについて伺った。

「芸術大学に行きたくて勉強してたんですけど、結局行けなかったんですよ。それで家を出ようってなった時に、海外留学をしようということでロンドンに行った。最初は英語を話してチャレンジすることが怖かったんですけど、だんだんそれが心地よくなって、やっぱり日本語じゃないところに身を置いてよかったなっていうのはありました。2005年頃のことなんですけど、物価が高くてすぐに働かなきゃってなりました。実家が飲食をやっていた背景もあって、働き始めたのがバーだった。誰も知り合いもいない中でその世界に入って、コンフィデンス、信頼を得て気持ち的にもゆとりというか、あ、いけるなと思えたのが2009年くらいですね」

7年のロンドン滞在の中で、最後の2年間は彼の地のバー文化の変化にも立ち会うことができた。英語のできる日本人バーテンダーという立ち位置もあり、横のつながりも広がっていったという。

「それまで高級なバーはあったんですけど、カジュアルなバーが増えていった。ヨーロッパなので周辺から多様な背景の人たちが入ってきて、新しい動きが出てきたところに立ち会えた。その後、NYを経て帰ってきたんですが、日本ではカクテルがスペシャルなものに留まっていると感じました。僕らにとっては非日常で遠すぎる。それをなるべく近い場所におきたいという思いを持ってきた。僕が海外にいるときに思っていたことは、すぐそこに美味しいお酒がいつもあるということでしたね」

そのギャップを埋めるのに役立ったのが、帰国して間もなく得たスカンジナビアンスタイルでカクテルやコーヒーを提供するノルウェー発の〈FUGULEN TOKYO〉でのバー・マネージャーというポジションだった。

「デンマークはよく行っていたんですけど、ノルウェー、北欧のカクテルの文化は知らなかった。結構日本に近しいものもありつつ、どこか発想が全然違った。ハーブとかの使い方がうまくて昆布なんかも使うんですよ。ありとあらゆる食べ物のフレーバーをうまくお酒に転換する。洋酒だけじゃなくて日本のプロダクト、焼酎とか日本酒とかとの合わせ方がうまかったですね。

僕は元々日本のバーテンダーを全く知らなかったので、なるべくいろんなところに顔を出して横のつながりを作ることも頑張ったかな。そのおかげで結構基盤になってみんなと仲良くなった。僕は38歳なんですけど、その辺がバーテンダーが一番多い世代で。そこはちゃんと横のつながりを作って、後輩たちを知って、またその後輩たちが後輩を作ってっていう。すぐにいろんな良いバーテンダーに出会えるような場の関係性を作りました」

コミュニティを構築し、新しい働き方を作る

この横展開が日本の新しいバー文化のベースとして機能していく。バーテンダーのコンペティションに参加したり、その仲間を応援したり。後閑信吾氏のようなコンペティションで活躍したバーテンダーが営む〈The SG Club〉のようなバーも誕生していった。一方でコンペティションに参加しなくてもバーテンダーが名前を知られるようになるといったシーンの厚みも増していった。その中で空人さんは、コンサルティングという働き方も確立し、代々木上原の〈No.〉、表参道の〈GYRE〉、兜町〈K5〉のバー〈Ao〉などの立ち上げに関わっていく。さらにはメーカーのアンバサダーという、それまで日本にはない職業も生み出していった。

「〈KYRO GIN〉というフィンランドのGINなんですけど、このアンバサダーを3年くらいやりました。ブランドの方がFUGLENに来てくれて、世界のバーテンダーのギャザリングの場があるからぜひ来てって呼ばれたんですよ。ラップランドという北極圏まで行って白夜の体験をしたり、チームでGINをブレンドしてブラインドテイスティングして美味しいねってなったものが製品化されるみたいな体験。それがすごく自分の中でもいいなぁとなって。

FUGLENを辞めるタイミングで、アンバサダーをお願いされました。啓蒙活動みたいな感じで人を呼んで試飲をやったり、イベントに行って〈KYRO GIN〉を使ってお酒を作ったり、ゲストシフトといって有名なバーに行って、〈KYRO GIN〉しか使わないような事をやる。こんな活動を3年くらいやりました。

その当時日本にはアンバサダーという業務は誰もやっていなくて、僕が一番初めだった。フリーランスっていう言葉も、僕らが作ったといっていいと思う。良くも悪くもバーに知名度はあるけど人に知名度はないという状況だった。そこのブランディングみたいなところはできるなと思って。誰もやってないからやってもいいんじゃないかなって」

こうして空人さんは、“働き方”自体を作っていった。バーテンダーにバーで終わってほしくない。香りや味がわかるから、そうしたディレクションも出来る。バーの外に出て、どんなことが出来るかを自らが体現していった。

体験できて、買うことができる場所を

そんな良い流れの中でパンデミックが起こった。その中で立ち上げたのが自身の場所である〈NOMURA SHOTEN〉だった。

「この先、withコロナの世の中でどのくらいの人がバーに戻ってくるのかと考えた時に、難しい面はあるだろう。だったら、体験出来る場所を作ってあげて、しかも買える場所にしたほうがいい。実体験できる場所ってどこだろうなと思った時に、日本だと角打ちスタイルがある、立ち飲みとしてビールも面白いだろうしワインもあれば面白いだろう、色々あった方がいいかなぁと。そこに自分がプロデュースしたモノもちゃんと置けるような場所を作ろうと思って、去年の始めくらいから企画しました」

今後はお酒の製造やブレンドなどにも関わって行きたいという空人さんに“働くこと”について聞いてみた。

「働くことは生活の一部なんですよね。自分のお店ですし、お酒を作ることは全然苦でもないし、この場所をどう良くするか頑張っている。働いている感じはしないです」

働き方そのものを作ってきた空人さんだからこそ、仕事は生活の一部であり自分の一部となっている。そんな自然体の働き方を確立することが、誰にでもできるという訳ではないだろう。しかし、働くことを好きになり、心地良い時間にしていく努力は誰もができるはずだ。空人さんの作ってくれる心地よさが溶け込んだお酒を口にすると、自分の働き方を見つめ直してみたくなるかもしれない。

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